EthereumのLayer2のチェーンのTVLは右肩上がりで増えています。Dencunアップグレードの実装が完了してLayer2のガス代が大幅に低下しました。
https://l2beat.com/scaling/summary
DEXやCEXなどの取引所、NFTのマーケットプレイスなど、各種プロトコルが独自のLayer2ないしLayer3のチェーンを構築する動きも加速しています。例えば大手取引所のOKXがLayer2に参戦することを発表したり、WorldcoinもWorld chainという独自のLayer2を準備中だそうです。Coinbaseが運営するLayer2のBaseの取引高はWarpcastの流行もあり増加しており、Baseを親チェーンとするLayer3のDegenチェーンも成功を収めています。
あなたの企業やプロジェクトが独自のLayer2を開発する場合、どのような選択肢があるのでしょうか?この記事ではRollup SDKとRollup as a Serviceを比較してまとめてみます。
そもそもLayer2・Rollupが何かについてはこちらのEthereum Foundationのドキュメントをご確認ください。
Rollup SDKまとめ
Rollupを開発している企業のいくつかは、そのソースコードを公開するだけでなく、SDKとして同様のLayer2ないしLayer3を構築する手順を簡単にしたパッケージを公開してくれています。
2024年4月現在、以下の4つのRollup SDKが公開されています。Altlayerにまとめられている各チェーンの特徴を記載してみます。
OP Stack
OP Stackは、Optimism Collectiveによって開発された、L2ブロックチェーンエコシステムを構築するためのソフトウェアコンポーネントのセットで、Optimismを強化するために使用されます。
- 安価で信頼性の高いガス料金でカスタマイズ可能なL2をデプロイ
- 許容的なMITライセンスでオープンかつ協力的
- L2市場でのBattle-Tested
- Validiumモードサポート(Celestiaを介して)によるコスト削減
- Superchainへの参加が可能で、Optimismの将来のチェーンネットワークでブリッジング、ガバナンス、相互運用性を共有
Arbitrum Orbit
Arbitrum Orbitは、ArbitrumのL2チェーン(Arbitrum One、Arbitrum Nova、Arbitrum Goerli、Arbitrum Sepolia)のいずれかを親チェーンとする専用チェーンをパーミッションレスに作成できる機能を提供します。
- 安価で信頼性の高いガス料金でカスタマイズ可能なL3をデプロイ
- カスタムネイティブガストークンに対応 • 実績のあるフォールトプルーフが有効
- Validiumモードサポート(AnyTrustまたはCelestiaを介して)によるコスト削減
- Rust、C、C++(Stylusを介して)でスマートコントラクトを記述可能
- 設定可能なアクセス制御
Polygon CDK (Chain Development Kit)
Polygon Chain Development Kit(CDK)を使用すると、あなたのニーズに合わせたZK駆動のLayer 2を構築できます。CDKを通じて作成された各チェーンは相互に接続されており、ほぼ即時の確定性、無限のスケーラビリティ、統合された流動性プールを保証します。
- 安価で信頼性の高いガス料金でカスタマイズ可能なL2をデプロイ
- ほぼ即時のトランザクション確定(zkプルーフを介して)
- Validiumモード(zkValidiumまたはCelestiaを介して)によるコスト削減
- 設定可能なアクセス制御
- 相互運用性と統合された流動性のためのLXLYブリッジへのオプトインが可能
ZK Stack
ZK Stackは、zkSync Eraのコードに基づいて、カスタムのZK駆動のL2およびL3(Hyperchainsと呼ばれる)を構築するために設計された、モジュラーなオープンソースフレームワークです。
- 許可条件のMITライセンスでオープンかつ協力的
- zkプルーフによるほぼ即時のトランザクション確定
- シーケンサーの選択からデータ利用可能性モード、トークノミクスの定義まで、モジュール性をサポート
- セキュリティと信頼性を示す実績を持つBattle-Tested
- 低遅延と共有流動性を誇る信頼できるHyperchainsネットワークにシームレスに接続
表にまとめると、このようになります。
Optimstic Rollupと比べるとZK Rollupはマシーンのスペックを必要とします。OP StackとArbitrum Orbitの大きな違いとしては、Arbitrum OrbitはArbitrum OneやNovaを親チェーンとするLayer3を構築する設計に対して、OP StackはEthereumを親チェーンとするLayer2を構築する設計という違いがあります。ZK StackもLayer3を構築する寄りの設計思想だと思います。
Rollup as a Serviceまとめ
上記のRollup SDKを用いて自力でチェーンを立ち上げることはできますが、経験が少ないと初期設定の難易度が高かったり、継続的な運用に不安を覚えることがあると思います。そこでRollup as a Serviceという主に特定のアプリケーション向けにカスタマイズされたRollupを容易に構築できる(裏側でRollup SDKの初期設定や運用を代行してくれる)サービスが存在します。
主要なRollup as a Serviceを比較してみます。
Conduit
- OP StackとArbitrum Orbitに対応したRaaS、明確な月額料金を提示している。
- 採用プロジェクト: Degen Chainなど
Caldera
- 調査した中では唯一ネイティブのガストークンをUSDCやWBTCで設定できるサービス(現時点で)
- 採用プロジェクト: Manta Pacific、zerion、KINTO、Loot、RARI
Zeeve
- 今回調査した中で唯一4つすべてのRollup SDKに対応していたサービス
- オフチェーンのDAレイヤーも複数から選択できる
- 無料テスト期間が長い
- 今回の範囲から外れるが、Avalanche SubnetとPolkadot ParachainsというAppchainsにも対応
Gelato
- Polygon CDKにも対応している
- 採用プロジェクト: Astar zkEVM
AltLayer
- LPでは複数プラットフォームに対応していると見せかけて、ダッシュボードからはあまりよく分からなかった。要問い合わせ
まとめた図表がこちらになります。
個人的にはZeeveが対応範囲が広く、料金も明確で利用しやすい気がしましたが、例えばOptimistic系でカスタマイズをさほど必要としない場合、他の選択肢で十分というケースも多そうです。他プロジェクトの採用実績も考慮するべきかと思います。また、交渉次第で良い条件が引き出せるかもしれません。
まとめ
Rollup SDKとRollup as a Serviceについて、選択肢を比較しました。調査した結果、想像より多くのプロジェクトがRaaSを利用しているという気付きを得ました(Rollup SDKを自分で構築しているかと想定していました)。
アプリ特化のブロックチェーンの構築を考えられている企業・プロジェクトの方は、ぜひ参考にしてみてください。
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